

昔は足場もないし、仕事は盗んで覚えろという時代だったからきつかったですよ。でも、盗んで覚えるというのには一理あるんでね。ものづくりはどんなに口で言ったところでダメ。微妙な加減を自分のものにするにはやはり盗むしかないんですよ。
私は現社長のおじいさんと一緒に修業しました。陽気な人でね、真夏の暑い時に「きょうは寒いな」と言って仕事場にやってくる(笑)。おかげで現場がずいぶん和んだものです。
いまでは呼吸するのと同じくらい、この仕事が体に馴染んでしまっていますから、できる限り現役を続けたいですね。職人の仕事には「天」というものがなくて、時代に応じてどんどん新しいものが出てきますからのんびりしていられません。まだまだ若い者には負けられませんよ!




仕事を探していた時に、たまたま紹介されたのが板金という仕事でした。板金が何かも知らずにこの世界に入り、半年くらいは「しまった!」とずっと思っていました(笑)。
何しろ、先輩のやっていることの意味が全くわからないし、言っていることもわかりません。先輩の頭の中には水の逃げ道というものが計算されていて、それに即して板金加工をしているのですが、私にはそれがさっぱり理解できないのです。「これをやれ」と指示されても、何のためにそうするのかもわからない。この状態は正直言ってかなり辛いですよ。我ながらよく辛抱したと思います(笑)。
まるでわからない状態だったものが、なぜか理解できるようになったのが半年後。そうすると何だか急に仕事が面白くなってきました。家の状態によってすることが全部違うし、応用に次ぐ応用で、「へえ、すごいんやな」と思えるようになったんです。人間辛抱が肝腎って本当ですね。おかげでいまは『屋根屋』と呼ばれることに誇りを感じて、充実した毎日を送っています。



いまの自分があるのは、一にも二にも仕事を教えてくれた親方のおかげだと、私は思っています。子どもが親に行儀作法を習うのと同じで、親方からは仕事を通じて生きることへの心構えを教えてもらいました。
『屋根は一番上にあるものだから、そこがダメだったら家が全部ダメになる』
『水というものは針の穴でも通ってしまう』
それらの言葉はいまもしっかりと心に刻みつけて、決していい加減な仕事をしないよう、自分自身を戒めています。
親方もそうですが、私はこれまでの人生の中で"もうアカン"と思うたびに、いつも誰かが手を差し伸べてくれて、ここまでやってくることができました。その恩を直接返せなかった人もいます。だからせめて一生懸命仕事をすることで、少しでもお返ししていけたらなあと思っているんです。



雨は下からも降るって、わかりますか?奈良の吉野というところに行くとね、どの家もちょうど山の尾根にあたるところに入口があって、そこが一番高い所。そして谷に向かって建物が下りている。その建物に谷から吹き上げる風が雨を運んで、雨漏りする時にも下から漏るんですよ。所変われば、ってやつですよね。それだけに、その土地の気候風土をよく承知していないと、この仕事はできないんです。
私も30年以上この仕事をしていますが、自分が一人前だと思ったことは一度もないですね。水というものは本当にむずかしいです。逆に、むずかしいからこそ飽きもせずに一つのことを続けてこられたのかもしれません(笑)。仕事自体はいたってシンプルなんですけれどね。雨漏りさせない。それだけのことなのに大の男が夢中になって30年以上。でも飽きないんだなあ、これが。



この仕事に必要な資質は、手先の器用さプラス想像力だと思います。四角い板を丸に作ったりするわけだから、こういう風にしたらこういう形になっていくということが先に見えていないとできない。逆にそれが見えたとしても、形にできるだけの器用さがないとまたできない。できないと悔しいから頑張る。そうやってみんな少しずつうまくなっていくという、意地と張りの世界とも言えるかもしれません。
それだけに、職人によってやり方もまた様々で、百人の親方がいれば百通りのやり方がある。気候風土にももちろん左右されて、雪の多い地方とほとんど降らない地方でも全然変わってくる。だから、どこへ行っても通用するようになろうと思えば、やはり基礎をしっかりと持っておくことしかないですね。最後は地道な積み重ねが物を言うのが、私たち板金職人の世界だと思います。


日本の伝統的な建築には欠かせない瓦に惹かれ、10年間修業した後に独立しました。森建築板金工業で、瓦屋根の修理や葺き替えを行なう際のメンバーとして、一緒に仕事をさせてもらっています。
最近では下地に土を入れずに、桟を打ってこれに瓦を引っ掛けて釘止めする方法が多くなっています。屋根にかかる重量が軽減でき、風に強いという特徴があって、伝統を重んじる奈良でも、少しずつ需要が増えてきています。
私が瓦職人をしているのは瓦が好き、ということが大前提なのですが、森さんにも同じ匂いを感じます。この人たちも板金の仕事が好きなんだな、って。
もちろん仕事をするのはきれいごとではなくて、生活するという大きな目的があります。でも、それだけでは長年続けることはできません。好きだから一生懸命やる。そしてお客様に喜んでもらいたい。そんな気持ちを共有できる森さんは、かけがえのない同志であり、いい意味でのライバルです。




雨漏りの原因の一つとして、サッシからの雨漏りというケースが結構多く、森建築板金工業さんと一緒にガラスの交換、網戸の張替えなどの工事をさせてもらっています。最近では屋根リフォームとタイミングを合わせて、防犯ガラスに取り替えられるお客様も多いですね。
森建築板金工業さんのいいところは、長い目で見て何がお客様にとって得になるかを常に考えているところだと思います。決してその場限りの仕事はしないので、その点はお客様にご安心くださいと、声を大にして言いたいですね。私たちもそんな森さんの足を引っ張らないように、気合を入れて頑張っています。
ものをつくる人間って根が単純だから、前向きのパワーに影響されると、どんどん前向きになっていくんですよね(笑)。これからもこの環境を大切に、一緒にいい仕事をしていきたいです。